「猫恋」🐈ねこに恋して🐈
第2話 河川敷のメイちゃんに一目惚れ
「ちょうどゴルデンウィークでした。5月だからメイちゃんと名付けたんです」とTさんは話し始めました。ご主人を病気でなくされたTさんは、猫と触れあうことが唯一の楽しみだったそうです。
河川敷で、その猫を見た瞬間、Tさんは一目惚れだったとか。メイちゃんは茶とらで長毛。猫の種類でいうと、メインク―ンかノルウェージャンフォレストキャットというところか…愛嬌のある可愛い顔立ちに釘付けになってしまったのです。
河川敷には、数匹の遺棄されたと思われる猫がいて、Tさんはその猫たちの避妊・去勢手術と餌やりなどをしていたのですが、メイちゃんを見たのは初めてのこと。どこから来たのか、遺棄されたのか…。それからメイちゃんにも餌を運ぶようになったTさん。
ところがメイちゃんは、餌皿を置こうとするだけで手に噛みつく、立ち去ろうとすると後ろからTさんのふくらはぎに爪をたて噛みつく…を繰り返します。Tさんは毎日血だらけになるのですが、その時心に決めたました。「これだけ狂暴なのは、きっと人間にひどい目にあわされ棄てられたのだ。私が絶対幸せにする」と。
メイちゃんは、河川敷にいるホ―ムレスのおじさんの小屋の下の土を掘り、そこをねぐらにしていました。それを知ったTさんは、まず、ホ―ムレスのおじさんに挨拶に行きます。「この猫を必ず里子に出すから、それまでは見守っていてください。お願いしますね」おじさんは言います。「こいつは馴つかねぇんだよ。まあ半年だな。半年したら馴れるさ」。
それから、雨の日も風の日も、1日も休むことなくTさんはメイちゃんへの餌やりを続け、馴れてくれるのを待ちました。
本来ならTさんの家で保護してあげるのがベストなのですが、Tさん宅はペット不可のマンションだったため、メイちゃんを飼ってあげることができませんでした。けれども里親さんを見つけることはできます。そう思ってメイちゃんの里親さんを募集サイトに掲載していました。
ある日、里親募集サイトから「飼うことはできませんが、里親さんが見つかるまでの期間だけ預かることはできます」というメ―ルがきます。Tさんは奇跡だと思いました。サイトを見て、そんなことを申し出てくれる人がいるなんて。その頃、メイちゃんもTさんに心を許すようになっていたので、メイちゃんを抱っこして捕獲。すぐに病院へ連れていき必要な検査を受けました。ちょうどメイチャンと出会ってから半年。河川敷のおじさんの言った通り半年だったのです。
一時預かりを申し出てくれた方の家でメイちゃんを預かってもらいながら、里親さん希望者からの連絡を待つ日々が続きます。
数件の問い合わせがあり、最終的に先住猫が2匹いるご家族の方に里親さんになってもらいました。
~もう会えないんだね~
メイちゃんから優太という名前になり、優太くんは幸せに暮らします。でも、里親さんの家に行ってから5年後に亡くなりました。
川で出会ったときに何歳だったのかわかりませんが、早すぎる死にTさんはショックを隠せませんでした。
けれども、里親さんから「本当に可愛いくて、精一杯大切にしたから後悔はありません」とキッパリ言われ、Tさんは「メイちゃん(優太くん)は幸せだったのだ」と思えるようになりました。
その後、Tさんが相変わらず河川敷に通ってると、何人もの人に声をかけられました。「茶色の長毛の猫ちゃんはどうしたのかしらね?知りませんか?最近見ないけど…」
「里親さんの元へ行ったんですよ」幾度となくそんなやり取りを交わしました。 さすがに、「もう亡くなったんです…」とは言えませんでしたが、メイちゃん(優太くん)は、みんなに愛されていたことがわかり、Tさんの心は癒されました。
「亡くなった主人のことは思い出さないけど、メイちゃん(優太くん)のことは、いつも心にあるのよ」と笑うTさんなのでした。